1995年に完成した「吉祥寺の家」がweb マガジン「100%LIFE」掲載中なので転載させて頂きます!!完成した後「渡辺篤史の建もの探訪」でも取り上げられた地下室のあるOMソーラーの住まい。25年以上経った今のイキイキ空間が紹介されてます
住みたい街NO.1の吉祥寺に家を建てる
吉祥寺駅北口の商店街「サンロード」を通り抜けて少し歩くと、賑やかな駅前からは一転して、閑静な住宅街が現れる。その一角に建つ、真っ白な壁に大きな出窓、真っ赤なドアが目をひく家が、出版社を営む佐久間憲一さんの自宅だ。
この家に暮らすのは、3人と2匹。憲一さん、妻の裕美さん、娘の緋子(あかね)さん、そして猫のみるくとくるみが、地上2階地下1階の3フロアに暮らしている。
佐久間邸が建ったのは、今から20年前の1995年。それまでは三鷹の賃貸マンションに暮らしていたが、バブルがはじけて不動産の価格が下がってきたのを契機に、物件を探し始めたそうだ。「マンションや建売住宅を何軒見て回ってもピンと来ないので、じっくり土地を探して好きなように建てようということになりました。そこで、三鷹を中心に何十カ所も土地を見て回りました」(憲一さん)。
そんな時に見つかったのが、吉祥寺駅から徒歩7、8分という抜群のロケーションのこの土地。「吉祥寺だから高いかなと思ったのですが、20坪とコンパクトだったのでそれほどでもなかった。私たちが見に行ったら別のお客さんも来ていて、取られないうちに(笑)と思って購入を決意しました」(憲一さん)。
1・2階にまたがった変形の大きな出窓が印象的な外観。真っ赤な玄関扉と上部の丸窓によって、楽しげな表情のエントランスに。玄関扉を赤にしたのは、赤が好きな裕美さんの希望。丸と三角をモチーフにした明かり採り窓は建築家のアイデア。
憲一さんは、家を建てると決めた当時のことを「性分というか仕事柄というか、月に何冊も建築雑誌を講読して、夢中になって建築について勉強しました」と振り返る。その中で、設計を依頼したいと思った建築家は4人いた。その4人に会いに行こうと思っていた矢先、建築雑誌に連載を持つ知り合いが5人の建築家を推薦してくれたのだそう。佐久間夫妻の好みを把握したその人が挙げてくれたのは、憲一さんと同じ4人と、「もう1人」だった。
その「もう1人」こそが、後に佐久間邸の設計を担当することになる、TAU設計工房の小宮成元さんだった。事務所の住所を調べてみると、なんと購入した土地の目と鼻の先。「ご縁を感じて、すぐに会いに行きました。この土地のことをよく知っていたし、とても感じがいい方で、妻と2人で小宮さんに頼もうと決めました」(憲一さん)。
家づくりを始めるにあたり、憲一さんが作成したのが、自分たちの暮らしのスタイルと新居への要望をまとめたレポート。そこに盛り込んだ内容は、①限られた土地でも広く感じること、②人を招きやすいこと、③十分な採光、④部屋を細かく区切らずに家族の気配を感じられる間取り、⑤本の収納場所の確保、だった。
それを受け、建築家の小宮さんはすぐに模型を作ってきてくれたそう。「その模型が素晴らしかった。今の家の形が、ほぼ出来上がっていましたね」(裕美さん)。地下から2階までの空間がつながった、ユニークな佐久間邸のプランが、その時に生まれた。
佐久間邸にはOMソーラーと呼ばれる、太陽エネルギーを有効利用するシステムが導入されている。屋根で太陽熱を集めて暖めた空気を、冬は暖房に、夏はお湯をつくるのに使う。
当初から夫妻は3層構造を希望していたが、立地的に3階建てが無理だったため、地下をつくることに。地下の湿気対策として小宮さんが提案したのが、OMソーラーシステムだった。「私も建築情報を調べるなかでOMソーラーのことは知っていたし、いいなあと思いました」と憲一さん。「正解でした。地下に湿気はこもらないし、冬場はとにかく暖かいんです。真冬でも、朝寒くて布団から出られないということがない。夏場はガス代がかなり安くなりますよ」と裕美さんが教えてくれた。
家具や雑貨の好みが似ているという夫妻。家を建てる前には、ご夫婦で家具店や展示会巡りをたくさんしたそうだ。「椅子はマンションに住んでいたころからずっと好きで、たくさん買ってきました。20年以上使っているものが多いかなあ」と憲一さん。室内にはご夫婦で選び抜いた椅子たちが、そこかしこに置かれている。
また、ご夫婦揃って料理もお酒も好きという佐久間邸には、食器も豊富に揃う。食器棚からは次々と、バカラのアンティークグラスや、100年以上前の古伊万里が出てきて、まるで宝箱のよう。「いい食器はもったいないからとっておくのではなく、普段から使おうと思っています。もっとあったんですけど、割っちゃったのも多いんですよ(笑)」と裕美さん。「ビールもワインも日本酒も、本当にいいグラスで飲むと美味しいんです」と憲一さん。2時間くらいかけてゆったりと夕食とお酒を楽しむこともよくあるそう。
家族の歴史を語るモノたちに囲まれた、遊び心あふれる住まい。これからも、この家とともに一家の思い出が刻まれていくのだろう。
http://100life.jp/architecture/18360/
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