【ドイツ・オーストリア建築研修2010】その⑫ルーデッシュの村役場2010/11/03

超高断熱・高気密な建築のひとつのモデルとしてドイツオーストリアで普及している「パッシブハウス」がありまして春に研修に行った際のリポートを紹介!

オーストリアのフォアアルベルク地方にある人口3500人の町、ルーデッシュで1995年から約10年間の歳月をかけて、住民参加型で行われた村役場+公民館の建て替えプロジェクト
パッシブハウスといっても住宅のみではなく、公共施設もあります。

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村役場+公民館(新築) in Ludersch ルーデッシュ
Gemeinde Zentrum Ludersch
建物は木造2階建て(地下1階建て)、床面積3135m2(うち40%はテナントが占める)、2005年竣工
総工費 590万ユーロ(約7億6千万円)
設計者 Hermann Kaufmann

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案内役 元村長 Paul Amann

今回のガイド役は、当時村長を務めていたアマン氏、現在はボランティアで世界中からの視察グループのためのガイドを引き受けている

 

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太陽光発電パネルが広場の明るい屋根!!という合理的な設計!!太陽光発電セルがラミネートされたガラスの屋根がこれを可能にしており、この広場こそが住民が一番望んだ要素だったという。年間を通じてさまざまなイベントが執り行われ、悪天候でも子供も大人も集まる村の中心になっている!!
この施設全体の消費電力(含む外構の照明等)は年間5~6千ユーロであり、この屋根の太陽光発電は毎年1万2千ユーロ分(発電量の100%)の売電を行っている
屋根の上の太陽熱温水パネルによって作り出された温水は、パラフィンの蓄熱タンクにエネルギーとして蓄えられ、厨房とフィジオセラピー(理学療法)のカウンセリング・ルームに必要な温水を供給する。
パラフィンによる蓄熱タンクは、4500リットルの温水タンクに相当する容量であるが、大変コンパクトである。建物全体の暖房用の温水は近くのバイオマス・ボイラーによるプラントから送られてくる。

 

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地熱および排気と熱交換を行った外気は、各室の天井に張られた無塗装の白モミの木の透かし張りの間に埋め込まれた金属製のスリットから室内に送り込まれている

 

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この建物の着工前、林業が成り立たなくなった村では過疎化が進み、人口が減少していったという。このような状況に歯止めを打つべく、アマン村長率いるルーデッシュは省エネ村役場建設プロジェクトによって村の経済の活性化を目指すことを決意、地元の森林資源を利用して建物を建設することが、建物のエンボディド・エネルギーを最小限に留め、村の林業とそれにまつわる産業を活性化させるために理想的であるという結論に至る(アマン氏は1984年から20年間にわたりルーデッシュの村長を務め、この間に村の人口は2200人から3300人に増えている。)

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ヨーロッパで一般的に使用されるOSBの代わりに地元で取れる白モミの木(英語名:silver fir)を斜め張りにしたり、ミネラルウール(ロックウール)の代わりにセルロース充填材や羊毛ウールを使用したり、PVCやハロゲンの含まれた配管を全てPV製としたり、といった仕様変更でコストアップを最低限に抑えて建設。

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外壁断面図、セルロース断熱厚さ:300mmに羊毛断熱材50mm

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驚くのが、建物が100年後に解体されるようなケースを考えて建設されたこと。
外装や内装に使用されている木の仕上げは原則無塗装とし、燃料になって木の寿命を全うするのだという。無塗装で外部の過酷な気象条件にさらされる木材の品質管理は厳しく行われ、現場でも頻繁に木材の含水量測定が行われた。
現場では木材に限らず搬入された300種類以上の建材に対してさまざまな試験を行い、ホルムアルデヒドや揮発性物質が含まれるものなど、約20%の建材が品質に適合できずに返品されたという。
パッシブハウス級の外皮性能を持つ建物を、材料への徹底的な配慮によって建設した結果、床平米当たりの一年間の暖房エネルギーが8GJ、建設時に消費したエネルギーが5GJという驚異的な数値を達成している。竣工後は全ての部屋でVOC測定を行い、ホルムアルデヒド等の濃度がWHOの敏感な人向けの許容値を下回ることを確認済

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最後は地階の設備機械室を拝見して視察終了!!

たとえば100年後に壊すことも想定して建設するという設計概念に驚く。木部は基本的に無塗装だとか・・・!!

Category: 建築旅 ,

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